さて今回から、税制改正(平成28年度)解説シリーズ5として、法人に関する税金(法人税・地方税)に関する改正内容を紹介させていただきます。
今回の地方税法の改正のテーマはズバリ“地方再生”です。
地方再生は安倍政権の重点施策の一つであり、主に地方間格差や企業間の負担格差(応益負担)を是正(調整する)という目的が今回の地方税法改正の特徴そのものと言えるでしょう。
それではその改正の概要を個別で見ていきたいと思います
1. 法人事業税の税率引き下げと外形標準課税の拡大
企業の応益負担、すなわち「赤字の企業も道路などの公共インフラを使っているはずだから相応の負担をするべきだ」という考え方が強く言われ出してから随分経ちました。
今回の改正はその方針に沿って、利益が出た場合にのみ課税する法人事業税から赤字でも納税が発生する外形標準課税へのシフトを強化するというものです。
具体的には次の通りです。
現行 平成28年度~
・付加価値割 0.72% → 1.2%
・資本割 0.3% → 0.5%
・所得割
年400万円以下の所得 3.1% → 1.9%
年400万円超~800万円以下の所得 4.6% → 2.7%
年800万円超の所得 6.0% → 3.6%
2. 地方法人特別税の税率改正
地方法人特別税は、各都道府県の税収格差を平準化するために国が徴収した税を各都道府県に配分し直すために平成20年10月から実施されている税金です。
なお名前に“地方”と入っていてかつ申告先は都道府県ですが、れっきとした国の税金です。
この税率が次の通り大幅アップされる事となりました。
現行 平成28年度~
所得割額×93.5% → 所得割額×414.2%
3. 法人住民税法人税割の税率改正
法人税や事業税は、法人の利益に税率をかけて算定するのですが、法人の住民税は、前述のように計算した法人税額自体に税率をかけて求める事とされています。
これが法人住民税法人税割と呼ばれているものなのですが、この税率が次のように変更されます。すなわち、儲かっている法人が所在する地方自治体がその法人から直接徴収する事の出来る税金が減少するという事となります。
現行 平成29年度~
・道府県民税法人税割 3.2%(4.2%) → 1.0%(2.0%)
・市町村民税法人税割 9.7%(12.1%) → 6.0%(8.4%)
※()内は制限税率です。我が国は現状でも“地方自治”をうたっており、その一環として一定範囲の自由度が設けられているのですが、この制限税率も「各自治体ごとに、この率までは税率を上げても良い」とされている、いわば上限の税率です。
4. 地方法人税の税率の改正
地方法人税は平成26年10月から始まった税金で、この税も自治体間の財政格差の縮小を目的として創設されたものです。
この税金の税率が次のように改正されます。
現行 平成29年度~
4.4% → 10.3%
5. 法人事業税交付金の創設
平成29年度から、法人事業税の一部を都道府県から市町村に交付する制度を創設することとなりました。
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なお、先日の報道でもありましたが、今回の地方税法改正に伴い、トヨタのある豊田市では税収が112億円も減少する見込みで市の予算編成に大きな影響が出る見込みだそうです。
また豊田市に限らずトヨタの関連会社、下請け企業などが集まる周辺自治体でも大なり小なり税収減が見込まれています。
しかし同時に愛知県全体では340億円の税収増が見込まれており、ここにも地域間格差是正の難しさが出ていると思います。
それでは今回はここまでとさせていただきます。
次回は、法人の税金に関する改正の中で地方税に関する改正概要の続きについてご案内させていただきます。
今回もブログをお読みいただき、ありがとうございました!